ふるさとがえり

龍谷大学社会科学研究所 2011年度月例研究会 第4回
「つながり」の再発見とまちづくり・共生経営の課題―私たちはどこで生きるのか―

 上記研究会に参加してきた。林弘樹監督『ふるさとがえり』を視聴し、シンポジウムで地域協働を考えるというものだった。

 岐阜県恵那市というまちがある。恵那市は昭和の合併から数えて計13市町村が合併して現在に至っている。『ふるさとがえり』は、この恵那市が舞台だ。

 この映画は、合併により薄れた地域の連帯感を取り戻すため、まちおこしプロジェクトとして企図されたものだ。しかし、映画自体には「地域PR」や「まちおこしもの」としての色はほとんどなく、エンターテイメント性に富んでいるとも言い難い。その理由は、このプロジェクトが映画の公開によって、まちをPRし、活性化をはかるものではないことに起因する。そうではなく、映画の製作過程で、オール恵那として住民が何らかの形で関わることで、地域への帰属感を高めることに重きをおいているからである。

 したがって、この映画は、内容と製作過程が切り離せないものだ。勿論、内容だけをとっても「生きる」ことをテーマとした深いものとなっているが、僕はこの映画を「補足の必要な映画」と考えている。ある意味では不完全な作品であるわけだが、恵那の住民の意識変革が起これば、この映画を製作した本来の目的は達せられたと思うのである。よって、この映画の真価は、今後数年かけてじっくりと計られる必要がある。